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札幌高等裁判所 昭和43年(ネ)87号 判決 1969年4月17日

東京都中央区銀座東五丁目二番地の四

控訴人 本州製紙株式会社

右代表者代表取締役 木下又三郎

右訴訟代理人弁護士 山根篤

<ほか五名>

釧路市黒金町七丁目五番地

被控訴人 釧路市

右代表者市長 山口哲夫

右訴訟代理人弁護士 坂本泰良

<ほか一〇名>

右当事者間の奨励金交付請求控訴事件について当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件控訴を棄却する。

控訴審での訴訟費用は控訴人の負担とする。

事実

控訴代理人は「原判決を取り消す。第一次請求および第二次請求として被控訴人は控訴人に対し金一、八三一万九〇〇〇円および内金七〇九万円に対する昭和四二年四月一日から、内金一、一二二万九〇〇〇円に対する昭和四三年四月一日から支払済まで年五分の金員、ならびに昭和四四年三月三一日かぎり金一、三四二万六〇〇〇円、昭和四五年三月三一日かぎり右と同額、昭和四六年三月三一日かぎり右と同額、昭和四七年三月三一日かぎり右と同額、昭和四八年三月三一日かぎり右と同額、昭和四九年三月三一日かぎり金六三三万六〇〇〇円、昭和五〇年三月三一日かぎり金二一九万七〇〇〇円およびそれぞれに対する右各期限の翌日から支払済まで年五分の金員の支払をせよ。訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。」との判決ならびに仮執行の宣言を求め、被控訴代理人は主文と同旨の判決を求めた。

≪以下事実省略≫

理由

第一被控訴人の本案前の主張について、

当裁判所も控訴人の第一次的請求は訴の利益を欠き不適法である主旨の被控訴人の本案前の主張は採用しえないと判断するものであり、その理由はこの点に関する原判決の判示と同一であるからこれをここに引用する。

第二第一次的請求(奨励金交付請求)について、

一  当事者間に争いのない事実。

1  被控訴人は、昭和二九年九月二二日条例第二六号をもって釧路市工場誘致条例を制定し、その後昭和三二年六月二四日、昭和三五年三月三〇日、昭和三九年七月四日および昭和四〇年三月二五日の四回に亘って同条例を改正した(以下右数次の改正を含む条例を旧条例という)。しかして、旧条例はその第三条において「本市は工場の新設又は増設があった場合この条例の定めるところにより次の方法で助成を行うことができる(1)奨励金の交付(2)前号の外工場の新設又は増設についての協力」と、第四条において「奨励金は本市産業の振興に寄与する事業で投資額五〇〇〇万円をこえるものに交付することができる」と、第五条一項において「奨励金の額はその工場(工場の増設の場合はその部分)について当該年度に課された固定資産税の相当額に次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(工場増設の場合は次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を乗じて得た額)の範囲内とし、その期間はその工場が操業を開始し、固定資産税を課された年度から三年とする。但し市長が特別の事由があると認めたときは更に二年を限って延長することができる。(1)初年度一〇〇分の一〇〇(2)次年度一〇〇分の七五(3)その後の年度一〇〇分の五〇」とそれぞれ規定していた。

2  控訴人は昭和二四年八月一日設立され現在資本金四二〇、〇〇〇、〇〇〇円を有する株式会社で、釧路工場の外に七工場を有し薄紙、板紙、中質紙上質紙、ダンボール原紙等の紙類および工業薬品を生産販売することを事業内容とするものであるが、昭和四〇年九月三〇日に釧路工場にKPライナー生産工場の増設を完成し、同年一〇月三〇日釧路市長に対し旧条例七条一項に従い奨励金交付の助成申請書を提出し、右は同年一一月四日受理された。

3  釧路市議会は、昭和四〇年一二月二八日旧条例中工場の増設に対する奨励金の交付を廃止する趣旨の釧路市工場誘致条例一部改正案を議決し、釧路市長は即日条例第二七号(以下改正条例という)をもってこれを公布施行した。

二  控訴人は、奨励金交付請求権は釧路市工場誘致条例に定められた客観的基準に適合する工場の新設又は増設という事実行為の完了によって当然に発生するものであるから、控訴人は昭和四〇年九月三〇日本件工場の増設により被控訴人に対し旧条例に基づく奨励金の交付請求権を取得したと主張し、被控訴人は奨励金交付請求権は釧路市長の奨励金交付決定によってはじめて生ずるものであって、工場の増設という事実行為の完了により当然に発生するものではないと反論するので判断する。

1  一般的に地方公共団体はその公益上の必要がある場合には他の事業等に対し寄附又は補助をする能力を有するものであり、本件釧路市工場誘致条例の定める奨励金も釧路市の産業振興という行政目的のため同市内における工場の新設又は増設(但し改正条例では新設のみ)を奨励ないし促進する趣旨で与える金銭給付であり相手方において返還義務を伴わない補助金の性質を有し、近時いわゆる給付行政の一作用に属するものということができる。

右のように行政主体が他の事業を助成ないし奨励するために金銭を給付することは、行政主体が非権力的作用として行うものであって、本来恩恵的、奨励的なものであり、私法上の贈与的性質のものとみるべきである。

しかしながら、上記のような補助金の交付がまれに行われる場合にはこれを個々の場合に私法的法律関係として律するに支障はないとしても、近時給付行政の分野の拡大の傾向に伴い行政主体の財政上ないし給付の適正公平等の見地からも別個の法律的規制の必要のあることは必然的であり現に、「補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律」も右のような傾向に即応するため立法されたものと理解することができる。

しかして、奨励金ないし補助金交付の法形式をどのように定めるかは立法政策の問題であり、立法者において選択の自由があり、その交付の形式を行政庁が一方的に行う行政処分として定立することも可能であると考える。けだし上記のように奨励金等の交付が本来は贈与契約の履行という性質のものであるにしても、行政主体が私契約の場合と同様にこれを与えるか否かの自由を持つものとすることは妥当でなく、その交付の対象、金額、時期、方法等を規制することによって行政主体を拘束するとともにその要件充足に司法的審査の途を開き交付申請を拒否された場合には抗告訴訟によってこれを救済する方途を講ずることは行政の民主化に適合する所以というべきだからである。

2  よって、これを本件条例について考察する。

旧条例および釧路市工場誘致条例施行規則によると、同条例は、第一条においてその目的、第二条において用語の定義を定め、第三条ないし第六条において助成の方法、奨励金交付の対象、奨励金の額の上限および交付の期間を定め、その交付の方法としては第七条において「奨励金の交付を受けようとする者は事業開始の日から三月以内に、協力を受けようとする者はその都度別に定める申請書を市長に提出しなければならない」と規定し、同条例施行規則においては上記申請書に記載すべき要件事項を定め、その第四条において「市長は申請書を受理したときは審査し適当と認めたときはその工場に対する助成の限度その他必要の条件を付して助成するものとする」と規定している。それと同時に同条例は第八条において「この条例の適用を受ける者が次の各号の一に該当する場合は協力の取消又は奨励金の一部又は全部の返還を命ずることがある」旨、および第九条において「市長は助成を受けた者に対して必要な調査を行い又は報告を求めることができる」旨の多分に権力的な規定を設けている。また条例の数次に亘る改正に際しても、「改正条例の施行前に奨励金の交付決定を受けた者についてはなお従前の例による」旨の附則を置くのを通例とした。

右のような各規定からみると、旧条例は工場の新設または増設に対する奨励金交付の基準を定めかつその目的達成のため或る種の権力的規定を置くとともにその交付の方法は交付を受けようとする者から行政庁である市長に対し申請をなさしめ、これに対して市長が交付決定をするという行政処分としての法形式を採用したものとみるべきであり、≪証拠省略≫によれば、同市長が申請を拒否する場合にはその決定とみるべき書面に、「この通知に対し不服のあるときは六〇日以内に行政不服審査法第六条の規定により市長に対し異議の申立をすることができる」旨の教示をなしていることが認められるから、その立法の意図も奨励金の交付はこれを行政処分として定立したものということができる。

3  旧条例が釧路市内における工場の新設又は増設に対する奨励金交付の基準を定めかつその交付を行政処分としての法形式を採用したものであることはすでにみたとおりである。

しかし右のごとき条例の定めがなされたからといって、さきに判示した奨励金の持つ本来の性格には変りがなく、条例上行政客体に対し当然に奨励金交付の請求権を与えたものと解することはできず、ただ市長において右条例の規定の内容にしたがってその定める範囲で奨励金を交付すべき拘束を受けるに止まるものと解すべきである。したがって、市長のなす交付決定は一種の設権的行為とみるべきであり、工場の新設又は増設をなした者から交付申請がなされ市長が審査の結果助成を適当と認め奨励金の交付決定をしてはじめてその者に奨励金交付請求権が発生するものと解すべきである。控訴人の主張するように昭和三〇年度から同三九年度までの間に合計七〇件に及ぶ奨励金交付申請がなされたのに対し一件も却下された事例がなかった(この点は当事者間に争いがない)としても、このことはなんら右の解釈を左右する根拠とはならない。

そうすると、条例の規定に適合する工場の増設という事実行為の完了によって当然に奨励金の交付請求権が発生するものとする控訴人の見解は採用し難いものであり、しかも条例上交付すべき金額、交付期間の延長については市長に裁量権のあることも明らかであるから、上記の見解を前提として自ら算定した金額の支払を求める控訴人の第一次的請求は他の点について判断するまでもなく失当というのほかはない。

第三第二次的請求(損害賠償請求)について、

一  控訴人が昭和四〇年九月三〇日工場を増設し、同年一〇月三〇日釧路市長に対し奨励金交付の助成申請書を提出し、同年一一月四日受理されたこと、釧路市議会が同年一二月二八日旧条例中工場の増設に対する奨励金の交付を廃止する趣旨の改正条例案を議決し、同市長が即日これを公布したことは前記第二の一に判示したところであり、同市長が、昭和四一年二月一七日上記控訴人のなした奨励金の交付申請を改正条例が施行されたことを理由に却下したことは当事者間に争いがない。

二  控訴人は、昭和四〇年九月三〇日本件工場を増設したことにより旧条例上被控訴人から必ず奨励金の交付を受け得ると期待する法的地位を取得したものである。工場の増設に対する奨励金の交付を廃止した改正条例は右控訴人の法的地位を侵害するものであり、被控訴人の代表者である市長はそのことを知りながら、改正条例を公布し、控訴人の申請を却下したもので、右はその職務を行うにつき違法に控訴人に対し損害を与えたものであると主張するので判断する。

1  旧条例に定める奨励金交付の要件が何時充足するかは条例の規定上必ずしも定かではない。本来恩恵的、奨励的性質の補助金(奨励金)の支出を永く将来に亘って義務づけることは諸情勢の変化ないし交付者側の財政的事情等からみて必しも相当ではなく、このような配慮から一般にこの種助成法規では「補助することができる」「予算の範囲内で」或は「何分の一以内」というように或る程度交付者側の拘束を軽減する形の文言を用うるのを通例とすることが顕著であり、本件条例もその例に洩れない。したがって、本件奨励金交付の要件が何時充足するかは条例および同施行規則の条項ならびに交付手続の実態等を勘案して判定するのほかはない。

旧条例第五条では「奨励金の額はその工場(増設の場合はその部分)について当該年度に課された固定資産税の相当額に次の各号に掲げる割合を乗じて得た額(工場の増設の場合は次の各号に掲げる割合に一〇〇分の七〇を乗じて得た額)の範囲内とし、その期間はその工場が操業を開始し、固定資産税を課された年度から三年とする。」と規定し、同施行規則第五条では「奨励金は各年度毎にその工場に課された固定資産税を当該年度内に納付した後に交付する。」と規定している。右各規定によれば、奨励金の交付は、実質的には当該新設又は増設された工場に対し賦課、納入された固定資産税金の一部を還元するのと異ならないものであり、先ず工場の新設又は増設が行われ、次いでこれに対して賦課徴収さるべき固定資産税額が確定された後に市長においてこれを基準として条例の定める範囲内の金額を交付する決定をなし、現実の交付は当該工場に賦課された固定資産税が納付された後に行われるものであることが明らかである。≪証拠省略≫によれば交付手続の実際においても、先ず工場を新設又は増設した者から条例の定める期間内に交付申請がなされると、右工場に対する固定資産税の賦課、奨励金交付の対象となるかどうかの実体調査、予算措置、審議会の答申等の手続を経た上当該年度の固定資産税が完納され次の年の三月頃になって市長の交付決定がなされていたものであることが認められる。

右のようにみてくると、旧条例の定める奨励金は、少くとも工場の新設又は増設が完了して操業が開始され且つその工場に対する固定資産税額およびその納期が確定することによって当該年度における交付の要件が充足されるものと解するを相当とする。

控訴人が本件工場の増設を完了したのは昭和四〇年九月三〇日であるから、右増設工場に対する固定資産税の課税価格および税額が確定するのは翌昭和四一年度であり、同年一月一日以降において課税されるものであることが地方税法(第三五九条等)上明らかである。そうすると、本件改正条例が公布施行された昭和四〇年一二月二八日の時点においては、右工場増設については未だ市長のなすべき交付決定の要件は完全に充足されていなかったものとみなければならない。

2  ≪証拠省略≫を総合すると、次の事実が認められる。

(イ) 旧条例はその原案では新設工場のみを奨励金の対象としていたところ、地元工場との均衡上増設もその対象とするに至ったもので昭和二九年に制定された当初から同条例を審議した釧路市議会(経済常任委員会および総務常任委員会)において経済情勢の推移に応じその内容を時宜に適するよう変更することを条件とする附帯決議がなされたこと。

(ロ) その後旧条例は釧路市の財政事情の悪化を主たる理由として数回に亘って改正が行われその対象、奨励金額の算定基準等につき漸次企業側に不利に改正されてきたこと。

(ハ) 旧条例の定める奨励金の制度は専ら固定資産税額を基準としその一定割合の金額を交付するものであって、実質的には固定資産税の一部減免と異ならないものであるが、政府はかねてから地方自治体が工場誘致のため地方税の減免措置を行うことが地方自治体の財政上支障をきたすことを理由にかかる措置に否定的もしくは消極的な態度を示し、昭和三〇年一〇月一八日には自治庁税務部長の通達をもってその旨を指導方針として明らかにしており、釧路市においても特に増設に対する奨励金制度の不合理性が指摘せられ昭和四〇年二月二七日開会の定例議会においては旧条例による奨励金制度の廃止が論議せられていること。

(ニ) 改正条例制定当時の釧路市の財政事情は、昭和三八年度における歳入決算総額二八億三、五四四万九〇〇〇円中土地売払代金(一億三、六五三万六〇〇〇円)の占める割合は四・七パーセントでその大部分の一億二、五五一万五〇〇〇円が経常一般財源に充当され、昭和三九年度には同様土地売払代金(三億二、〇二〇万一〇〇〇円)の占める割合は九・一パーセントでその約半分に当る一億五、〇三七万五〇〇〇円が一般財源に充当されるという状況で相当窮迫した事態にあったこと。

(ホ) 釧路市は、改正条例制定当時控訴人その他新設工場に対する奨励金として既に交付決定をなした確定債務の未払分がなお約三億一、八七四万円残存しており、さらに控訴人の本件増設工事および訴外十条製紙株式会社の新規の増設工事などについて旧条例による奨励金を交付するとすれば、少くとも概算合計一億五、六〇〇万円(かりに交付期間を旧条例七条の規定により七年間に分割するとしても年間平均二、二三四万円)の新たな支出が見込まれ釧路市の財政規模、状態に照らして将来の財政負担を一層加重ならしめる結果となることが懸念されたこと。

(ヘ) 釧路市においては昭和三九年現在で道路の舗装率が僅か四・七パーセントに過ぎず、北海道の重要都市の中でも非常に低率であるため舗装部分の拡大が強く要望されており、その他下水道設備の拡充、老朽校舎の建替えなどさし迫った住民福祉政策の遂行のために必要な財源に乏しくこれが捻出に苦慮していたこと。

以上の諸事実が認められ、他にこの認定を左右し得る証拠はない。

3  本来恩恵的奨励的性質の奨励金の支出を永く将来に亘って義務づけることの妥当でないことは前にも触れたところであるが、旧条例の定める工場増設に対する奨励金の制度は釧路市の産業を振興し住民の利益を増進するという公益上の必要にもとづき、その源資は税金を主体とする同市の一般財源から支出されるのであるから、もともと同市の財政状態や政治的社会的情勢の変動に応じて将来の改廃が予測される性質のもので永久不変の制度として存在するわけのものではなく、釧路市としてはその政策的考慮に基き奨励金制度そのものを廃止すると否との自由を有するものと解するのを相当とする。

控訴人の工場増設については改正条例施行当時未だ市長のなすべき奨励金交付決定の要件を充足していなかったものであることは既述のとおりであるが、旧条例が維持存続するかぎりにおいてはその他の要件が完備することにより市長から奨励金交付決定(昭和四一年度を初年度として交付の対象となる)を受け得る地位を有していたものということができる。

しかしながら右のような控訴人の地位ないし期待がその現在の状態において法の保護を受けるためには、釧路市において右のような地位を侵害してはならないという法的拘束を受けている場合でなければならないのであって、右の地位を民法一二八条、一二九条の定める条件付権利と全く同一のものと解することはできない。

旧条例上右のような地位を保障する趣旨の規定は存在しないし、工場増設に対する奨励金の制度はその本来の性格からみて釧路市においてこれを廃止すると否との自由を有するものであることは前段判示のとおりであるから、控訴人の前記地位ないし期待は釧路市に対し条例の改廃によっては侵害してはならないという法的拘束を設定するまでの権利性を有するものとは認め難く、右は事実上の期待に止まり未だ法的保護の対象となり得る地位にはあたらないものと解するを相当とする。

≪証拠省略≫によって認められる控訴人が釧路市に工場を設置するに至った経緯および過去において工場増設に対する奨励金の交付を受けてきた事実を十分に斟酌しても上記の結論を左右することができない。

そればかりではなく、前記認定の事実によれば旧条例の定める奨励金の制度は、その制定の当初から経済情勢の推移に即応して改正することが予定されていて、数次に亘って企業側に不利に改正されてきたものであり、釧路市においてはより緊急を要し、一般住民の福祉に直接関係のある施策を行う財源を確保する公益上の必要からかねて議論のあった工場増設に対する奨励金の制度を廃止する改正条例を制定施行したのであるから右条例の改正は合理的理由に基くものということができる。改正条例が上記のような控訴人の有する地位につき何らの考慮を払わなかったとしても、立法政策上妥当かどうかの問題の残ることはかくべつとして違法の評価を受けるべきものではないと解する。

そうすると、改正条例が控訴人の有する権利ないし利益を侵害する違法のものであることを前提とする第二次請求も爾余の点について判断するまでもなく失当として排斥を免れない。

第四結論

よって、結局において以上と同一判断のもとに控訴人の各請求を棄却した原判決は正当であって本件控訴は理由がないから民事訴訟法第三八四条第一項によりこれを棄却することとし、訴訟費用の負担につき同法第九五条、第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 杉山孝 裁判官 黒川正昭 裁判官 島田礼介)

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